茨木在住の美術作家・藤本絢子さんの話 Vol.4

小さいころから図工が得意な子だったという藤本さん。
今、多くの展覧会に出展したり店舗の壁画制作をしたり、と
様々に活躍の幅を広げています。

「絵を描く」仕事をすることについて、改めて聞いてみました。

美術作家として

美術作家になると決めた理由を、藤本さんは
「唯一、頑張れることだったから」と笑って答えます。

kk作品制作横1DSC03736

絵を描くことを通して、作家としてどうありたいかを聞くと、
「絵を続けるためにも、
職業として社会的にもっと認めてもらいたいというのはありますよね。
積極的に、社会へ発表していくことも、必要なんだろうと思っています」とのこと。

絵を描くことを仕事にしたいと考えている人に
藤本さんから声をかけるとすれば?との質問には、
少しだけ考えてこう話してくれました。

「プロを目指すなら、相当の覚悟と責任が必要だと思います。
でも、仕事にしてないからダメだとも、思わないんです。
絵を通して自分の表現を続けることは、趣味でも立派だと思う。
他の仕事をしながらでもできると思うし、
ずっと描き続けて、いい表現をしようとすることは素晴らしいと思います」

大切なことは、自分が納得できる表現をすることであって
プロかそうでないかは、覚悟次第だということでしょうか。
「自分が納得できる作品を」という言葉は、藤本さんから何度も出てくるフレーズで
そこにご自身がとても重点を置いていることを、改めて感じます。

「絵を続けるのであれば、今あるものを最大限に活用する工夫も必要」
と藤本さんは続けます。

「人によってどうするかは色々なんですけど、
『あの人はこうだからできるんだよね、いいよね』と
そういうことを言いだしたらきりがない。
それぞれに持っている強み、武器、やり方をいかに活用するかを考えて、
余計なプライドに縛られず自分の気持ちに素直に選んでいくしかないかな」と。

選ぶ中で捨てる必要に迫られるものもあるでしょう。

「それも優先順位、覚悟」と藤本さんは言います。
安定していない道を選ぶなら、捨てる覚悟も必要。
それでもやりたいと思えるものなら、自信を持ってやったらいい
と言う藤本さんの言葉は、美術作家を目指す人だけでなく
他のことを頑張ろうとしている人にも言えることだなぁと感じます。

この藤本さんの言葉は、今回訪問したアトリエを見ると
とても説得力のあるものなんです。

「絵を描く!」ということが最優先となって整えられた
アトリエからは、藤本さんが話している
「絵を描く仕事をする覚悟」を感じる、一本筋の通ったような、
でもどことなく愛らしい・・・、
藤本さんのひたむきさのようなものを感じる空間でした。

kk上の扉をさす2DSC03752

この上部の扉、実は元々は土壁だった部分です。
ここを手で砕いて、そこに手製の扉を付けました。
大きな作品を運びだす時に、壁が邪魔になってしまうからです。

kkあけたとびらDSC03753

 

部屋の照明もきちんとした色味で見る事ができるよう
専用のライトを使っているそうですが、

kk照明横からアップDSC03743

きちんと作品に光があたるように、元々あった照明を斜めに傾けて
調節しています。

kk照明と藤本さんDSC03746

このシリーズの最初の記事でもチラッと触れましたが
アトリエ内はすべて真っ白で、これは床も壁も天井も
藤本さん自身が、板を張ったり色を塗ったりして作りました。
制作の過程で飛び散った絵具は、あとからふき取ったり塗ってしまいます。

真っ白なエアコンも
kkエアコンDSC03754

絵の具が飛び散って、それはそれでポップで可愛らしいですよね♪

kk筆で作業DSC03759

魔法の杖のような、長い柄の筆を使って俯瞰して描いたり
水で絵の具を溶いて、シャバシャバのものを筆につけて
振り回すようにキャンバスに乗せたり・・・。

もう余計なことは一切気にせずに、制作に没頭するために作られた
素敵なアトリエでした。

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7月19日に開催された、ローズWAMの「Woman Artist Meets」のでトークイベントで
藤本さんは東北の大震災の時に陸前高田へ行ったときのことを紹介していました。
kk震災の写真を持つDSC03886

震災から1年経ったとき、
仮設の商店街を立ちあげるプロジェクトに関わっていた友人とやり取りをして
店舗のために使うコンテナに絵を描くことになった話は印象的でした。

「お店の人が『残った人たちが集まれる店を作りたい』と言っていて
そこに関わることができたことが嬉しい」と話す藤本さん。
被災地という色彩のないところへ、鮮やかな藤本さんの色彩を
持って行こうとした時に
「アートの押しつけはしたくない」と思っていたそうです。

kkコンテナに描いた絵DSC03888

最初は「何をしにきたんだ?」という雰囲気だった現地の人たちも
制作が進むにつれて、
「うちの店は地元の野菜が自慢だから、野菜を描いて」と頼まれたり
「この絵に合うような店に」と思って店の準備を考えてくれたり、
お店の人たちの気持ちが乗ってきてくれたことが嬉しいことだったという話でした。

kk震災復興の店写真DSC03904

藤本さんへの取材も、7月19日の様子も
ここで紹介しきれないほどのことがあるのですが、
藤本さんの言葉を借りさせてもらえるなら、

「アートってよくわからないこともあると思う。
よくわからないものこそ、
ネットや写真を通してではなく
実物を直に見て感じてもらえたらと思います」・・・ということが
少しでも伝わったらウレシイです。

百貨店との企画で作られた浴衣。「これもアートです」と藤本さん。帯の原案となった絵も展示されていました。

百貨店との企画で作られた浴衣。「これもアートです」と藤本さん。帯の原案となった絵も展示されていました。

ローズWAMの藤本さんの作品も、
その展示場所の特長をきちんと計算されて制作されています。
これは、そこへ行かないとわからないんですよね。

絵って、実は小さいころから私たちの近くにあったもの。

今回の「HUB-IBARAKI ART COMPETITION」は、
市民の生活のそばに展示がされていて、
19日のイベントのように街の人との関わりも企画されています。
実際に、ワタシが藤本さんと出会えたのは
普通に通り道にあった場所で制作がされていたからなのですよね。

肩肘をはってしまうことなく、自然にゆる~く
「芸術」が身近なものになったら、もっといろいろとオモシロいかなぁと
そんなことを感じた藤本さんへの取材でした。

藤本絢子さん、ありがとうございました。

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