感動!佐渡裕×日本センチュリー×立命館コンサート。演奏とレクチャーと歌声と
はい、茨木ジャーナルです。
イベント一覧の記事でも紹介していた「佐渡裕×日本センチュリー×立命館 茨木市民のためのコンサート」が3月28日(水)、立命館大学大阪いばらきキャンパスのOICアリーナで開催されました。
1部、2部それぞれ1,300人のチケットは完売。クラシックコンサートでは「未就学児はご遠慮ください」ということが多いのですが、今回は「どなたでもお気軽に」というコンサート。開場時間よりずいぶん前からじーっと列に並ぶ人も多くいらっしゃいました。
交響曲のレクチャー、立命館大生との演奏。そして…
立命館いばらきフューチャープラザには、大きなホールもありますが、今回のコンサートの会場は「OICアリーナ」という名称の体育館。
床にシートが敷き詰められ、パイプ椅子が並んでいました。バスケットゴールやネットなどもあって、まさにThe体育館。
開演時間に、佐渡裕さんはすーっと静かに登場。
ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」から演奏がスタート。
「オーケストラは、最大人数で一つのものをつくる。たくさんの楽器が全力を出すところが魅力」と、交響曲の魅力を紹介しながら、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」のレクチャー&演奏へ。
「この『新世界より』は最後までに45分かかる。ふつう、演歌などを聴くのって3分半ほどでしょ。交響曲は『時間の芸術』と言われていて、テーマとテーマが互いに刺激しあってドラマが展開されてるんですね。45分の最後にたどり着いたとき、ドヴォルザークと旅行した気分になりますよ」
130年前にうまれた交響曲第9番「新世界より」は、アメリカの音楽学校に就任したドヴォルザークが、アメリカの特長をいかして作った曲。
「当時は、音楽については新興国だったアメリカ。ヨーロッパから「新しい大国、新世界」と呼ばれていて、この交響曲が『新世界より』と名付けられた」と、背景やどんなところを聴くとおもしろいかなど、解説しながらの演奏が続きます。
今回のコンサートはステージのすぐ前に、親子席も設けられていました。
「幼い子ども(泣き声など)とのハーモニーも楽しいですね」という佐渡さんの言葉に、会場には和やかな笑いも。たくさんの子どもたちにオーケストラとの出会いがあると嬉しい、と話していました。
親子席にいらっしゃったお母さんたちも「ステキな音で感動しました、カッコよかった!こんな近くで聴けるなんて、感激しました」と喜んでいらっしゃいましたよ。
コンサートでは、立命館大学応援団吹奏楽部との合同演奏も。「76本のトロンボーン」という曲に、日本センチュリー交響楽団と立命館大学吹奏楽部とそして客席が、佐渡さんのタクトでひとつになって盛り上がりました。
一人ひとりの声が「楽器」に
「茨木市民のためのコンサート」のラストは、
会場にいる全員で「ふるさと」を歌いました。
「音楽にできることがある」と今でも東北・熊本をまわっている佐渡さんは、
「人の声は最高の音楽。ガラガラ声の人、低い声、高い声が得意な人、一人ずつが『楽器』です。みなさんの声で締めくくりたい」と、ステージの左右へ移動しながら指揮をします。
コンサート最初の「たくさんの楽器が全力で音を出すのが、オーケストラの魅力」との言葉。それを、こんなカタチにして見せてもらえるとは…と感動です。
歌いながらハンカチや手で涙をぬぐっている方も、一人や二人ではありません。多くの方の心を打つ、温かくステキなコンサートでした。
「工夫する、自分で見つける、聴きにいくことは大切」
コンサート後、佐渡さんに少し話を聞く時間をいただきました。
「お客さんとオーケストラそれぞれの人たちが、音の振動を通して一つになる。たくさんの人と一緒に今を生きてるんだなと感じられるのが、音楽だと思う」と佐渡さん。
今回の演奏会への思いや音楽の持つチカラのこと、さまざまな立場で頑張っている人たちへ伝えたい思いを聞かせてくださいました。
「ふるさと」から思うこと
一年の半分は海外で過ごす佐渡さん。「ふるさと」という言葉からは、住んでいる場所や海外で初めてステージに出たときのことを思いうかべると話します。
「この間、何年ぶりかに両親の住む実家へ帰ったんですけどね」と見せてくださったのは、住宅街の中の広くはない道や、建物と建物のあいだの狭い路地の写真。
「昔の風景、子どものころに野球をして遊んだリした場所が残ってた。自分たちの大切な遊び場だから、自然と工夫して遊びのルールも生まれるでしょ。どうすれば楽しめるか、通行人の邪魔にならないか。そんなことも、今の原点にあるような気がしますね」
それからもう一つ、と佐渡さんは東北・熊本地方へ思いを寄せます。
「今も東北や熊本へ行ってます。音の振動を通して、みんなが一緒に生きてることを感じられるのが、音楽。大切な人やものを失ったり、ふるさとの様子が変わり、心に痛みを抱えている人を、音楽は励ますことができるんだと思います」
「子どもにもシニアにも、オーケストラとの出会いを」
1997年9月まで日本センチュリー交響楽団の指揮者だった佐渡さん。
今回の茨木市での演奏会は、日本センチュリー交響楽団を応援したくて「演奏会をしよう」と話をしていたことが始まり。縁があって立命館大での開催となりました。
「今回、茨木のために台本を書いたけど、交響曲のレクチャ-って初めてのこと。これをきっかけに『もっと聴いてみたい』『コンサートに行ってみようかな』と思う人が増えたら嬉しい」
演奏会は出会い、縁のものだという佐渡さん。
「茨木っていい街。家族をイメージさせられる雰囲気もあって。今日のコンサートで親子席があったように、子どもとオーケストラの出会いももちろん大事。ただ、それだけじゃないと思うんですね。やっぱりシニア世代のことも思いながら、演奏会をしています」
今日のような演奏会こそ、時間に余裕を持てるようになったシニア世代に聴いてほしいと話します。
自分で自分のページを開くきっかけに
もともとフルーティストとして研鑽を積んでいた佐渡さんは「緊張するタイプだから、フルートの演奏に向かない。指揮は天職だと思ってる」と話します。
「天職って、与えてくれた仕事でも特別なことでもないと思う。それが自分の天職だと思える日がくるかもしれないし、そうでないかもしれない。でも、夢や希望を持つことは大事。目の前のやらなきゃいけないことはやりながらね」
「今は、お金を払うといろんなものが手に入るでしょ。音楽も意識しなくてもどこかから聞こえてくる。でも与えられるのを待つのでなく、自分で見つける、聴きにいくって大事。そこで得る達成感っていいものですよ。今日のような演奏会が『クラシックを聴いてみたい』とか『もっと知りたい」と、自分で自分のページを開くきっかけになれば嬉しいですね」
「狭い路地で、なにもないところから工夫して遊んだ風景も原点のひとつ」という佐渡さんの言葉とつながって、ストンとお腹に落ちたような気がしたお話でした。
「茨木市民のためのコンサート」は終了した瞬間、立ち上がって感動を表現する人もたくさんいらっしゃいました。座っている方も手を上にして拍手していました。
コンサートが終わった会場は、知らない人同士がお互いの表情だけで「コンサート、よかったよね~」と語り合ってるかのような空気。
「みんなが一緒に生きてることを感じられるのが、音楽」という言葉が伝わる贅沢な時間でした。
佐渡さんと日本センチュリー交響楽団・立命館大の関係者さま、貴重なお時間をありがとうございました。
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