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茨木の山の恵みを街へ伝えるボノカフェ・樋口智香さんの話

茨木市水尾にあるボノカフェ(BONOcafe)。茨木市車作・泉原で収穫した野菜を中心に、米・味噌・玉子・果物も茨木産のものを使って手作りする料理が、茨木の季節を味わえると人気です。

BONOcafe樋口さん2DSCF9093_1

車作の実家で、祖父の野菜作りを幼いころから見ていたという、ボノカフェのオーナー・樋口智香さん。「大きくなったらケーキ屋さんになりたい」と夢見ていた樋口さんに、ボノカフェを作った理由をお聞きしました。

茨木の山で育った野菜を、街で食べられるBONOcafe

BONOcafeお店の入口そばDSC02575

―ボノカフェは、オープンして10年が経ったんですね。

 樋口 今は、広くてきれいな道が通ってますけど、ボノカフェがオープンしたころは、砂利道だったんですよ。近くのバス停付近から先は通行止めで、人も通らないような場所で。

 ―駅から少し離れた場所ですが、ここにお店を出そうと思ったのは?

 私がある飲食店で働いてた頃です。最初はその店のオーナーに、ここで店を出さないかと話がきたんです。オーナーには、そのとき出店の予定がなかったので「智香ちゃん、やってみたら?」って、私に声がかかったんです。

 ―お店をしたいという思いもあったんですか?

 小さいころは、ケーキ屋さんをしたいと思ってました。声がかかったときも、そのオーナーの店で、デザートを担当させてもらっていたので、オーナーが「住宅街やし、デザートの店にしたらいいんちゃう?」って言ってくれたんです。

 ―でも、ケーキ屋さんでなくカフェをオープンしたんですね。

 そう。ここを見に来たとき「人、通るの?ここでケーキだけの店?」って思ったんです。無理ちゃうかなぁと。そのときにふと、実家の車作で(父方の)おじいちゃんが野菜を作ってることを思い出して、そういえば野菜がいつも余ってるなぁと。その野菜でランチを出して、カフェみたいなお店にしたらできるかも・・・、いや、やってみたい!って気持ちになりました。

家族は最初、反対してた

 ―ご家族の皆さん、喜んでくださったでしょ?

 家族みんな大反対。私には、店をするよりも、結婚して子どもを産んでほしいと思ってたんでしょうね。高校を卒業して製菓の専門学校へ行ったんですけど、そのときも反対されてましたから。

 ―応援してくださるようになったのは?

 ボノカフェがメディアに取り上げられるようになってから。近所の人から「お孫さん、お店してるんやって」って言われ始めたころ、おじいちゃんに「やるからには頑張れ。店をつぶすなよ」って言われました。気にかけて野菜も作ってくれてたんですけど、最初はムスッとしてましたね。

 ―心配なさってたんでしょうね。

 一度、新聞に大きく掲載されたとき、おじいちゃんは、記事をクリアファイルに入れてました。それを、人に見せている様子を見て、やっと、喜んでくれてるのかなぁと思いました。

BONOカフェお野菜
(写真はボノカフェFBから)

茨木産の野菜にこだわる理由

 ―ボノカフェのランチメニューでは、おじいさんが車作で育てた野菜などを使ってるんですよね。

 そうです。オープンしたころは私も実家にいたので、自分でも野菜を収穫して店へ通いました。今も時間があれば収穫に行きます。おじいちゃんは5年前に亡くなって、今は父も収穫してくれてます。

 ―メニューでは、野菜以外も茨木産のものを?

BONOcafeのお米DSC04231

 お米、味噌、玉子も茨木産です。今は、車作のもの以外にも、同級生のお母さんが、泉原周辺の農家さんの野菜も一緒に持ってきてくれます。最近ハマってるジャム作りの果物も、できるだけ茨木で採れたものを使いたいなぁと思ってます。

 ―茨木で採れた野菜を使いたいと思うのは、なぜですか?

 茨木の旬が味わえるからです。例えば、ふきのとうって、一番おいしく食べられるのって一週間ぐらいなんですよ。茨木の野菜で作るBONO定食を食べれば「あ、今、茨木ではこれが旬やねんな」ってわかりますよね。ボノカフェを通して、茨木の季節を味わえたらいいなって思っています。

ケーキもごはんも作るのが好きだと思ってた

BONOcafeのケーキ
(写真はボノカフェFBから。バレンタインのガトーショコラ)

 ―小さいころはケーキ屋さんになりたかったんですね。

 小さいころから、おばあちゃんと一緒に料理を作ってたんです。家族みんなのごはんを。

 ―毎日?

 週末に、おばあちゃんと一緒に大きなリュックを背負って、バスで街まで出るんです。魚神(現在は別の場所で営業)で、一週間分の買い物をして大荷物で帰る。一週間、何を作るか考えて料理して、また週末買い物。

 ―もはや、お手伝いではなく、料理担当?

 料理をするのは好きでしたね。だから、私の技術は、おばあちゃんに教わったもの。自然にお菓子作りもしていて、クッキーを焼いたりしてました。小学校のころ、誕生日にオーブンを買ってもらうほど。

 ―小学生の誕生日プレゼントが、オーブン?!

 よっぽど好きだったんでしょうね。それまでは、トースターでお菓子を作ってて、お母さんが見兼ねたのか、私がお願いしたのか覚えてないけど。買いに行ったとき、母方の祖母も一緒に行ってくれてて「おばあちゃん、これ買ってあげるわ」って、ハンドミキサーも買ってくれました。

 ―お菓子作りが好きなんだなって思ってくださってたんですね。

 トースターに温度計がついた程度のオーブンだったけど、5年前につぶれるまで、ずっと使ってました。子どものころに使ってたゴムベラとかペティナイフは、今でも店で現役です(笑)。

BONOcafe樋口さんのペティナイフDSC04240
(子どものころに使っていたペティナイフは、今もボノカフェで活躍中)

ケーキの道で考えた「本当に好きなことって?」

 ―高校を卒業して製菓の専門学校へ。

 はい。専門学校のあとはホテルに就職して、2年勤めました。「辞めた自分、大丈夫なのか?」と、そのあとは、いろんなバイトをしてましたね。多いときは6つも7つも掛け持ち。寝ずに働いた時期もありました。

 ―ホテルを辞めたのは?

 ホテルでデザートの担当だったんです。ホテルってね、宿泊や食事に来るお客さんのためにデザートを作るんじゃなくて、週末の披露宴の準備に平日を使うんです。いちごのヘタ取りなら、ずーっとヘタを取る。一週間かけて、週末の1000人近いお客さんのためだけに、デザートを作るんです。

 ―それも大変そうですね。

 でも、同じ作業をするだけなので、そんなにしんどくない。ただ、ずーっと厨房にこもってるから、お客さんの反応がわかんないんですよ。

 ―あぁ、確かに。

BONOcafe樋口さん3DSC04226

 ホテルに勤めてたら安定もしてるけど、平凡に過ごしてる気がした。お客さんの様子もわからなくて、どうなのかなって。しんどくても、楽しいことに進みたいと思ったんです。

 ―さっき「辞めた自分、大丈夫なのか?と思った」とおっしゃってましたが、それはどういうことでしょう?

 専門学校でケーキを専門に学んでも、実際にケーキの仕事に就くのは半分ぐらい。2年3年と続くのが、その半分。

 ―樋口さん、頑張って続けてたんですね。

 でも、スゴイ人はずっと続けるし、フランスで活躍している子もいます。だから、2年で辞める自分って全然すごくない、もっと頑張らないとって思ったんです。

 ―思い描いてた通りにいかない経験をなさったんですね。

 そうですねぇ。もっと頑張ろうと思ったけど、じゃあケーキのことを一生懸命できるか考えると、なんとなく違う。ケーキって、とっても深いんですね。だから、頑張ってる人は、やっぱりとってもケーキが好きなんだと思うんです。

 ―なるほど。

BONOcafeランチ写真
(写真はボノカフェFBから。毎日メニューが替わるBONO定食)

 私は、そこまでの気持ちじゃないというか。デザートってそんなに頻繁に食べるものでもない。ふと、ごはんは一日三回食べるって思ったんです。ごはんは、みんなに喜んでもらえる機会がたくさんあっていいなって。

 ―料理をすることで、人に喜んでもらいたいんですね。

 そうですね。作るのも好きだけど、喜んでもらうのが嬉しいって気持ち。自分でしたいって思いもあったかな。

しんどいほうへ、楽しいほうへ

BONOcafeの野菜テーブルの上DSCF9013

 ―料理、お菓子作りが好き、自分でやりたい、喜んでほしい。それぞれ、気持ちのパーツが集まってきましたね。

 私、高校のときから一人でカフェに行くのが好きだったんです。「何時何分、どこどこの店にきました。今、スタッフ何人、お客さん何人、店の中はこんな感じ、メニューはこんな感じ」ってノートに書き留めてたんです。

 ―自然と、そんなふうに過ごしてたんですね。

 自分で店をしたかったのかなぁ。

BONOcafeは全額借金してスタートした

 ―ホテルを辞めたあと、いろんなバイトをした。そこへ、店をしないかと声をかけられたのでしたね。ランチもできるカフェと決めてからはスムーズに?

 全額、借金しました。外装も内装も全部借金で(笑)。

 ―え、全部?!

 全部。ほんっとに資金なんてなくって。29歳以下の女性のための融資があったので、それを使って。それでも、事業計画書とかが必要でしょ。とにかく必死で、手書きで作りました。今見ると、笑っちゃうような計画ですけど。

 ―よく、開業のためにバイトしてお金を貯める話は聞きますが、全額借金してというのは、ビックリです。

 今から考えるとコワいですよね。そのときは、そんなにスゴイ覚悟だとも思ってなかったんですけど。

 ―それができたのは、どうしてでしょう?

 私、バイトをめちゃくちゃたくさんしてきてたでしょ。それこそ、ほぼ寝ないでバイトしてた時期もあったし。毎月返済する予定の金額を見たら「もし店が潰れても、最悪バイトしたら返せる」って思ったんです。だったら、やってやろうって。

 ―バイトしてたときの経験が「やれる」って決意に繋がった。

 そう。でね?店を作るにしても、店舗をデザインしてくれる人もいないんですよ。ビルのオーナーさんから、どうしたい?って聞かれるだけ。結局、自分で絵を描いたりしたんです。

BONOカフェ店内DSCF2877
(樋口さんが描いたとおりの店内。実は、棚などはお父さんの手作り!)

 ―あ!もしかして・・・?

 そうなんですよ。一人でカフェによく行ってたときに、いろんな店の様子を観察してたから「お客さんって壁際によく座るよなあ、じゃあここは壁にして」か「この席からは、こう見えて」とか、やりたいことがどんどん出てくるんです。壁から何ミリでって物差しで測りながら、自分で絵を描けたんです。

 ―それもスゴイですよね。

 だいたい、自分のイメージした通りに店ができました。借金はあっても、自分がこうしたいと思った部分は、ほぼその通りに完成しました。私、しんどいほうへ進むんでしょうね。でも、それが楽しいんです。

カフェはできる!手作りをしたらいいと思います

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(2017年1月「ボノカフェは10周年を迎えました」のポーズの樋口さん)

 ―「全額借金してお店を始めた」と聞くとビックリもしますが、いろんな経験を重ねていたから、自然とトライに繋がったのかなと感じます。オープンしてからは、いかがでしたか?

 ボノカフェも11年目に入って、今はたくさんのお客さんに来ていただいてますけど、オープン当初は、全然!オープン直後は忙しいって聞くでしょ。だから、初日なんてお米を一升炊いてたのに(笑)。あんまりにもお客さんが来ないから、スタッフと自分たちでお金だしてランチ食べてた日もありましたね~。売上がゼロって寂しいから。

 ―今のボノカフェからは、想像できないですね。

 人が通らない場所だったから「あの行き止まりの向こうに、店できてる」って、だんだんと広まっていったみたいです。少しずつ取り上げてもらえるようになって、気が付いたらって感じですね。

BONOcafeスタッフDSCF9125

 ―ボノカフェをこんなふうにしたいと考えていることはありますか?

 ボノカフェのBONO定食って、日替わりなんです。たくさんのレシピがあって、例えば白菜だけでも100種類ぐらいレシピがある。「働くのが好き」「料理をするのが好き」というスタッフに恵まれてるから、レシピをスタッフみんなに伝えていきたいですよね。今、必死でまとめてます。

 ―お客さんに、こんなふうに使ってもらえたらと思うことは?

 安心・安全なものをどんどん増やしたいと思ってるので、子どもさん連れの方にも、利用してもらえるようにしたいです。今、ハマってるジャム作りなどのテイクアウトや雑貨も広げられたらって思ったりもするし。

 ―私、デザートもまた食べたいなと思ってますよ。

 お食事で来店してくださるお客さんが多いので、喫茶の時間も気軽に利用してもらえたら、嬉しいですよね。

BONOカフェデザート

カフェをオープンするのは、誰でもできる!

 ―楽しいお話を聞かせていただきました。もし、カフェをオープンさせたいと思ってる人がいたら、樋口さんはどんな言葉をかけますか?

 絶対にできるってこと。店をオープンさせるのは、誰だってできると思います。

 ―絶対にできる、ですね。

 手づくりでメニューを出したら、大丈夫じゃないかなって思うんですよ。手作りすることが「ここでしか味わえないメニュー」になるんじゃないかなって。

 ―なるほど。

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(樋口さんが手作りしているジャム。贈り物に買って帰る人も多いそう)

 ボノカフェでもジャムを売ってますけど、おいしいジャムを買って売るならラクです。でも、私は手作りしてる。手作りで一生懸命やってたら、ここでしか味わえないからってお客さんは来てくれる。私はそれを信じてるんです。作ることも楽しいし。

 ―お話を聞いてると、いろんなことはあっても、それもまとめて楽しんでいる様子が伝わってきます。今の樋口さんに影響を与えた人やものって、なんだと思われますか?

 やっぱりおじいちゃん。好きなように人生を歩んでた人だと思うんです。イノシシ猟、鮎釣り、田んぼでお米を作って、畑で野菜を作って。全部自分の好きなことで、楽しそうだった。しんどいことはあっても、好きなことをして生きてるのっていいなって思います。

 ―好きなことや、やりたいことがあるってステキだなと、改めて思いました。楽しいお話を、ありがとうございました。

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(この日一番の笑顔は、正面にご主人が座った時。「目がハートになってない?」と樋口さん)

BONOcafeからイベントのお知らせ

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(秋の田んぼの風景からBONOcafeのロゴはトンボ。「後ろに退かない、前進する勝ち虫」と樋口さん)

BONOcafeは2017年1月に10周年を迎えました。3月、4月には楽しいイベントを企画しているそうですよ!

BONOcafe 3月のイベント

3月には10周年イベントとして「くじ引きイベント」を実施します。

2017年3月22日(水)は、BONO定食(ドリンクデザート付、1500円)をオーダーすると、ハズレなしのくじ引きにチャレンジすることができちゃいます。

1等チーズケーキ(1280円)
2等手作りジャム
3等プリン
4等自家製クッキー

BONOcafeを存分に楽しめる嬉しい商品があたるくじ引きです。

BONOcafe 4月のイベント

4月29日(土)は、BONO祭を開催!
祝日ですが特別に営業します。お店の前のスペースで、地元茨木の野菜や特産品、ハンドメイド雑貨の販売をします。子どもも遊べるスペースも用意されるようですよ。

店内では、ロコモコ、鶏そぼろ丼、Mom Ami(モン・アミ)さんが特別に焼く茨木産黒米入りパンのサンドイッチなどの特別メニューが♪

15時からはティータイムコンサートも実施予定。手作り菓子とお茶をいただきながら生演奏を楽しめます。

【BONOcafe】
所在地: 茨木市水尾2丁目14−35
電話: 072-632-5124
営業時間 11:00~17:00(LO 16:00)
休み: 日・祝
駐車場 あります。
【BONOcafe公式サイト】

〒567-0891 大阪府茨木市水尾2丁目14−35

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【季節の果物をギュッと瓶詰め!茨木産野菜ランチの店BONOcafe(ボノカフェ)】
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【育てる人と作る人。伝えたいのは、茨木の価値-千提寺farm.とBONOcafe】
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