子育てに関わる人たち必見!茨木高校の先生に聞く「子どもに伝えたい大切なこと」
はい、茨木ジャーナルです。
2015年は茨木市に立命館大学のキャンパスができ、それ以前から茨木にある追手門学院大、梅花大などとともに、イベントやいろんな場面で大学の名前を耳にしました。
茨木市内には高校も多く、生徒さんたちが活動している場面を見たり聞いたりすることもあります。
(JR茨木駅から阪急へ向かう中央通り沿い店舗のシャッターの絵は、春日丘高の生徒さんが描いたと聞いたことがあります)
茨木ジャーナルでずっと前に【茨高生はお勉強ができるだけじゃないんやろなぁ、と改めて思う記事発見】という記事や【これも茨木名産!『茨高カステラ』って知ってる?】という記事で紹介した茨木高校。
茨木高校の家庭科教諭の入交享子(いりまじり きょうこ)先生が、先日あるイベントが開催されると教えてくださいました。
茨木市内のイベントにも多く関わっていらっしゃる入交先生。案内いただいたイベントについてお話を聞いていると、茨木のことや生徒さんたちのことや子育てのことなど、話はどんどん広がって・・・・。
とても素敵なお話だったので、ぜひ紹介したいと思います。
一日3回×365日続く「食」に関するイベント
まずは、入交先生にご案内いただいたイベントについて紹介しておきましょう。
茨木市内で開催されるものではないのですが、子育て中の方、食べ物に関心のある方はもちろん「ちゃんとした食生活ができてないなぁ」と感じている方にもお勧めしたい内容です。
どんな立場の方でもわかりやすいお話になってるそうですよ。
元気野菜でかわるこころとからだ
日時 : 2015年12月18日(金) 13:30~16:00
場所 : 豊中市立環境交流センター
参加費: 500円(とよっぴー農園野菜おみやげ付)
生ごみを活用した畑で作られた野菜を食べることで、体だけでなく心も元気になる子どもたちのお話を、体験からユーモア満点にお話してくださるのだそうです。
講師は、佐世保市を拠点に幼稚園・保育園、学校で有機農業を通した土作り体験などの食育活動をしている吉田俊道さん。
ティータイムをはさんで、質問コーナーもあるそうですよ。
申し込みは『豊中市立環境交流センター』
電話:06-6844-8611(9~17時まで)です。
住所:豊中市中桜塚1-24-20 (駐車場はありません)
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食と環境シンポジウム
~未来の子供たちのために地域がつながる~
日時 : 2015年12月19日(土) 13:30~16:40
場所 : 大阪成蹊短期大学
参加費: 無料
対象 : 食育、教育、環境、PTA関係者さま、一般先着200名
「弁当の日」というのをご存知ですか?
私も実はあまり詳しくなかったのですが、親が手伝わず、子ども自身が自分のお弁当を作って学校に持ってくるという取り組みです。買い出し・調理・後片付けまでの全てを子どもがするというのですから、親にも任せる気持ちや見守りが必要ですよね。
子どもが、失敗や達成を通して生きる力を自然と身につけていき、親自身も見守りの大切さを知るというこの取り組みが、いま全国に広がっているのだそうです。
その「弁当の日」を推奨している竹下和男さんと、上記の吉田俊道さんがお話をしてくださるイベントです。
申し込みは『食と環境シンポジウム事務局』宛てFaxでも受け付けています。
当日の来館も大丈夫ですので、お気軽にご参加くださいね!
Fax : 072-671-4209 (食と環境シンポジウム事務局宛て)
氏名・住所・連絡先電話番号を明記し、Faxをお送りください。
【当日の直接来館でも大丈夫ですよ!】
会場 : 大阪成蹊短期大学(大阪市東淀川区3-10-62)
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上の写真は、今年の「安威川フェスタ」でのワークショップで作ったピザ。入交先生は、茨木市内のいろんなイベントでも活動していて、茨木神社の黒井の清水大茶会や、茨木音楽祭などで「カフェ場」というブースで出店しています。ご存知の方も多いかもしれませんね。
今回、案内していただいたイベントのことだけでなく、教育の現場やほかのイベントで、どんな思いを持って活動なさっているのかなどもお聞きしました。
この記事では入交先生が、学校での経験や活動の中から考える「子どもたちへ伝えたい大切なこと」を紹介します。
「食」はいろんなことと繋がっているもの
毎年、茨木市では「茨木スイーツフェア」が開催されています。
茨木で作られたさつまいもを使ったメニューを、市内の店舗が作って販売するというイベントですが、そこで使われているさつまいもが「宙(そら)いもプロジェクト」という活動で作られたものです。
そして、その活動を一から作ってきたのが入交先生。
まずは「食」についてお話をお聞きしました。
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― 今回案内をくださったイベントもそうですし、宙いもプロジェクトのこともあるので、入交先生は「食」に深い方というイメージがあります。
入交先生(以下略)「一日3食365日、食べ物が体に入りますし、私たちの体はすべて食べ物から作られていますから、大切なことですよね」
― 今回、ご案内くださった二つのイベントについては、先生もとても熱心に関わっていらっしゃるのですよね。
「食のこと、食べ物のことを考えていけば、これはどうやって作られてるのかなとか、この野菜はどこで作られたんだろうということに繋がっていくんですね」
― 食べ物のことやそれに関わる環境のことを知るきっかけになるようなイベントなのですか?
「食べ物やその環境のことなどは、いろんな人がそれぞれにいろんな活動をしているんだけど、目に見えた成果というか、みんなが揃って『えいやー!』とならないということがあるんですね。それが『弁当の日』という活動が、いろんなフィールドの人たちを繋げてくれたんです。そして『弁当の日』の取り組みを始めたのが、今回講師で来てくださる竹下和男さん。取り組みを通して子どもたちや家族がどう育っていくのか紹介してくださいます」
― 入交先生も『弁当の日』の取り組みを広げていく活動に関わっていらっしゃるんですよね。
「広く知ってほしいと思って、いろんな人が協力しあって活動しています。『弁当の日』の仕組みを作った竹下さんは小学校の校長先生でしたが、活動の中で繋がっているのは、教育関係者だけでなく、農家さんやお医者さんなどいろんな立場の人なんです。つまり『食』は私たちの生活の様々なところで繋がってるってことの表れなんですよね」
― 私たちの体は食べ物でできているし、そもそも『食』はいろんなことが繋がっていますよね。
「そう。毎日続く営みですし、本当に私たち自身を大きく左右する大切なものです。だからこそ、特に子どもと関わる人たちには、考えてもらえるきっかけになってほしいと願っています」
「弁当の日」は弁当作りが目的ではない
― 入交先生は、やっぱり「食」については、特別な思いがあるのでしょうか?
「そうですね。でも家庭科の中でどれ?と聞かれると『保育』にも思いがあります」
― 「保育」ですか。
「『弁当の日』って、子どもたちが自分のお弁当を自分で作って学校に持ってくるという取り組みなんですね。その活動から見えてくることや成果などは、やっぱりとても感動します。でも、お弁当を作ることが目的ではない。それはひとつの手段なんです」
― 弁当作りがゴールではなくて、手段ですか。
「そう。『弁当の日』を通して子どもを育てていくというのかな。
茨木高は『弁当の日』の取り組みはしていないけれど、その手段を持っている、同じことをしているなぁと思うんです」
― どういうものですか?
「体育祭などの行事。行事で生徒を育てる仕組みを持っているんですね。それが茨木高の伝統で、それがあるから学力も伸びるんです」
― 同じように「弁当の日」の取り組みを通して子どもが伸びる、と。
「茨木高では、勉強をする時間を割いて行事に費やすんだけど、それで1年生から2年生にかけてぐっと生徒の学力や人間性が伸びるんです。
これは自分の思うとおりにならないことを体験することで、縦のつながりを作っていった結果なんです。そういう困難というか頑張る力が成長させてくれているんですね」
― ほかの人との関係の中で、人間性が伸びるということなんですね。
「茨木高では行事を通して、1年生2年生が自分より上の世代の生徒の姿を見て、それに憧れていくんですね。あんなふうになりたいとか、自分もがんばりたいとか。『弁当の日』も同じ。全部自分で作ってくる子もいれば、ご飯だけ自分で炊いたという子、買ってきたものを詰め替えたという子もいる。でも、ほかの子のを見て、自分もやってみたいと思うんです」
― それを通して変わるんですね?
「変わるんです。子どもってすごいんですよ。『自分もやってみたい』『友達みたいになりたい』と手を働かせることを積み重ねると、自己肯定感が生まれるんですね。これは、本当に大切な経験です。『弁当の日』に限らず、なかなか思うようにいかないことや困難なことに取り組む経験が子どもたちを変えるんですね。やがてその子どもたちが世の中を作っていくんですから、とても大切な経験です」
「保育」への思いが強い理由
― 先生が「保育」への思いがあるとおっしゃったのも、そこが繋がってるんですか?
「ずっと以前、大変な事情を抱えた生徒が多い学校で家庭科を教えていたんです。子どもたちのために、家庭科でできること、必要なことは何か考えたら、自立するために大切なこと、食べていくことだなと思ったんです。3年生の家庭科では食物の時間を作って、毎回調理実習をしました」
― 自分でご飯を用意できるように?
「そう、食の自立が大切だから。でもね、算数が苦手な生徒たちが、ですよ?目盛を読めるようになるんです。足し算、引き算、割り算、掛け算があやしい生徒たちが、実習を伴うとできるんですね。おいしいものを食べたいと思うとできる。体験に基づくとできるようになるんですね」
― それ、本当に生きる力を手にしたっていう感じですね。
「本当に。もともと生活する力は持っているんですね。家でご飯をちゃんと食べる環境を持っていなかったけど、最後には自分たちで整えられるようになったんです」
― そうやっていくと、やっぱり変わっていくんですか?
「表情がやっぱり変わります。食が崩れると、やっぱり生活って崩れていくんだなぁと思います」
― 改めて、食べ物や食事の大切さを考えさせられます。
「人間は、生理的早産の動物だから育てられないと生きられないでしょ。その時、誰に育てられるか、どう育てられるかは、みんな違う。そう考えると、生活リズムや食事のことをちゃんとしていたらと思わされる場面ってあります」
― 育ってきたことが今に繋がっているという感じでしょうか。
「大人の愛情を受けて育ってなかったら、やっぱり思春期に出てくることもあるしね。でも、出てきたらそれはとてもラッキーなんですよ」
― 生徒たちと接する中で、そういう場面もあったんですね。
「そういうときに、生徒自身の本質の部分に向き合うチャンスがあるんです。そして、この子をもう一度育てていきたいなあと思うんです。それぞれいろんな環境を抱えながら『あなた、こんなふうに育って、えらかったね』とほめてあげたくなるんです」
― 乳幼児期にどう過ごしたのかって大事なんですね。
「そう。そして、子どもが育ってくる道筋のことを考えさせたり、教えることができる最後の機会が高校なんですね。最後の砦」
― 子どもの育つ道筋、ですか。
「乳幼児期ってどういうときなのかとか。でも、自分の今までのことは変えられないでしょ。それは親が生きてきた道筋だからね。そして評価するものでもないんです。ただ『あなたは、ここにいていい』ということ、生まれてきてよかったんだよということを伝えたいんですね」
― 思春期の子供たちや周りの大人たちのことを考えたとき、繋がってくるのが乳幼児期からの道筋だということでしょうか。
「ここまで育った大人を変えることは難しいかもしれない。でも、子どもたちには知ってほしいし体感してほしい。わたしたちの体は食べ物でできていて、食べるものや環境で変わるんですね。一日3食365日食べることは続くから、大切なんだと教えていきたいんです」
「家庭科」を通して子どもに伝えたいこと
― 考えてみると「保育」って、衣食住のすべてが関係してくることかもしれませんね。
「離乳食に始まって、おむつや肌着のこと、赤ちゃんの過ごす環境のこととかね。人間の始まる最初の土台のところだから、やっぱり大切です」
― 入交先生が「家庭科」という科目を通して、生徒たちに伝えたいことは何でしょう?
「暮らしを大切にしてほしいということかな」
― 丁寧に暮らすとか。
「こんなのでいいのかな?と思ったり、こうしたいなと思ったり、よりよく生きることを目指す人であってほしいと思うんです」
― 『弁当の日』や茨木高の行事という手段を通して、という話と繋がってきますね。
「思うようにならないことを体感すると、人は成長するからね。だから、幼児だけでなく小学生、中高生を持つ親にも『すぐになんでも与えないでほしい』とは思いますよ(笑)」
― いろんなものが、手にしやすくなっていますから。
「お金を出せば叶うでしょ。でもやっぱり、誰かのために何かができる自分であることって、幸せなんだと思うんです。自分の手を動かすことでできることが、たくさんあることも知ってほしいですね」
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「食」のことを熱心に取り組んでいらっしゃるというイメージの入交先生。
今回、ゆっくりお話をお聞きして改めて「食」に関する活動への思いだけでなく、子どもを育てることへの強い思いを知ることができました。
入交先生のお話は盛りだくさんで、一度に紹介しきれないほど。。。
茨木高校の生徒たちのことや、授業や活動のお話なども、また紹介したいと思います。