季節の果物をギュッと瓶詰め!茨木産野菜ランチの店BONOcafe(ボノカフェ)
はい、茨木ジャーナルです。(2022年4月19日更新)
4月7日(土)朝日放送「LIFE-夢のカタチ」で、茨木市水尾のBONOcafe(以下ボノカフェ)店主・樋口智香さんの、新しいスイーツメニュー作りに取り組む様子が紹介されていました。
「ランチを通して茨木の季節を伝えたい」という樋口さんが、新メニューを作るときに考えていたことや、自然の恵みを詰め込んだステキな商品について、話をお聞きしました。
旬のものは自然が作ってくれている
―― テレビ、拝見しました。新しいスイーツが完成したんですね。
樋口智香さん スイーツは、味にも見た目にもこだわっちゃって大変でした。
―― 苦労したところが。
スタッフ全員が同じように盛り付けられないと。飴細工やメレンゲの部分が難しいので、私の仕込みが増えちゃった(笑)。夜な夜な仕込みをやってます。
―― テイクアウト用のスイーツも作ったそうですね。
店内で食べてもらうだけでなく、持ち帰りができるものもいいなと思って、いちごのチーズケーキを作りました.
―― ボノカフェのテイクアウト商品は人気があります。
ショーケースを店に置いたのが2年ぐらい前。自分でのこぎりを使ってカウンターをガシガシ切って。ランチメニューも増やしてたけど、テイクアウト商品があれば店のイメージも広がるなぁと。初めはチーズケーキとプリン、ジャムを並べてました。
―― 以前の座談会でもみなさんが「おいしい!」とおっしゃってました。
今は常温保存できるジャムも、最初のころは冷蔵でショーケースに並べていました。これからもいろいろ並べていきたいです。
―― 新しいメニューの予定も?
実はときどき気まぐれで「今日だけメニュー」みたいなのが並ぶ日もあります。
―― シェフの気まぐれテイクアウトバージョン?
自分が食べたいとか、これ食べてほしいと思ったものを作っちゃう。いつもはないものがショーケースに並ぶので、一瞬で完売することも。気まぐれなので、忙しい日に作っちゃうこともあって、スタッフに「えー、今日出すんですか?!」って言われることもあるけど。
―― 「食べてほしい」と思うのは、どんなときですか?
先日のテレビで、三島独活(みしまうど)のコンポートを作ってるシーンがありました。それを使ってパンナコッタを作ったんです。独活を食べられる時期は限られてるから「今、これがおいしいから食べてほしい」って、そういうときです。
―― ボノカフェでは、ショーケースの中からも季節を感じられるんですね。
そうですね。旬のものって、シェフには作れない。旬のおいしさは、自然が作ってるでしょ。自然の恵みがあるっていうか、それを生かして作りたいんです。
―― なるほど。
一瞬のおいしさは、そこでしか味わえない。それを伝えられたらなぁって。
食材を通して季節を伝えたい
―― 「茨木の季節を感じてほしい」という樋口さんの思いを、茨木産野菜のBONO定食でも果物でも伝えたいってことですね?
そう。スイーツでも、季節の果物を使ったメニューを増やしたいとは思ってるんですけど。
―― どんなカタチになるんでしょう?
パティシエだったのでケーキを、って気持ちもあるけど、実は果物をフレッシュなまま提供するって難しいんです。
―― どういうところが?
露地栽培の果物は、収穫時期にたくさん店に届きます。果物って生で使ってショーケースに入れても、時間がたつと水分の量も変わる。たくさんの果物が、いい状態のまま続くことはないんですよねぇ。
――確かにそうですね。
じゃあ、旬の果物がたくさん届いたときにどうしたらいいか。おいしい状態でフレッシュな果物を食べてもらうにはと考えて、出た答えがジャムなんです。
―― それでこんなにたくさんの種類のジャムがあるんですね!
茨木の果物って、ブルーベリーややまもも、いろいろあるんですよ。いずれは、店のものは100%茨木産の果物で作れたらいいなぁって思ってます。
―― 茨木の季節を伝えたいってところはブレないんですね。
茨木の自然の素材を味わって、季節を感じてほしいのが、私の思い。ジャムは、フレッシュというかジューシーな部分を表現したいと思ってます。
「ジャムを作りたい!」と強く思った
――フレッシュな果物のおいしさをジャムで伝えたい、と。
そうそう。自然の力がつくった旬の味を、瓶の中に閉じ込めるって感じで作ってます。
―― ジャムは何年ぐらい前から販売するようになったんですか?
3年ぐらい前かなぁ。前からゆずのジャムは作ってたんだけど…、この話、してましたっけ?
―― えー、なんだろ(笑)。
本格的にジャムに目覚めたきっかけって、新婚旅行なんです。
―― お!それでそれで?
パリに行ったら、パリの人たちのジャムに対する感覚が、私が持ってた感覚とちがって。
―― はい。
普通の、なんてことのない民宿みたいなホテルに泊まったんですけど、朝食がすごかった。たくさんのパンと大きなジャムの瓶がガサガサ―ッて置いてあるんです。しかも「全部手作りです~」って。
―― さらっと置いてある感じ。
そう。すごいーって思って。
―― ですよね。
ほんとに、なんてことない宿なんですよ?なのに、何種類もジャムを用意してて、全部手作り。気持ちがこもってる感じが、ジャムから伝わってきたんです。
―― それがジャム作りのきっかけに。
そう。モンサンミッシェルのそばの普通の宿。安いサバイバルみたいな旅で泊まった、ご夫婦でやってはるところの朝ごはんで(笑)。
―― あはは。その旅で出会っちゃったんですね。
日本で言うなら、味噌やぬか床かなぁ。なんかね、パリの人はみんなそうなんですって。どこの家にも銅鍋があるらしっくて、大阪の家にたこ焼き器があるみたいな感じ。
―― 家々で手作りするのが普通なんですね。
普段食べるものだから家で作って普通でしょっていう感じ。ジャムを作るのってたいそうなことだと思ってたから、考えが変わりました。
―― それで本格的にジャム作りを。
それまでもジャムにしたりケーキに混ぜることはあったんですけどね。基本的には果物も『定食で使うもの』って考えがあったんです。
ジャムは最強の調味料
―― ボノカフェの柱が季節を味わうランチだったからですよね。
そう。あ、ジャムってね、料理にもうまく使えるんですよ。
―― わぁ、聞きたい!
例えば、パイナップルペッパージャムは肉料理に。パイナップルがお肉を柔らかくしてくれるでしょ。梅ジャムは魚の煮つけに使うと、とろみも出てオイシイ。
―― あー、ほんとだ!
ゆずジャムは、ゆず味噌にできます。八朔ジャムやいちごジャムはドレッシングにできちゃう。ジャム1に、さとう1/2、酢2、油2の割合でカシャカシャ混ぜて塩をちょい足し。ジャムはフランスの人も、調味料にして使ってるみたい。
―― 早く聞いたら良かった!パンに塗ったりトッピングに使うだけじゃもったいない。
はちみつキンカンは、喉が弱い主人を思って作ったジャム。はちみつキンカン茶にして飲んでもおいしいんです。
―― ジャムを作るときにこだわっていることは?
ペクチンを入れないこと。とろみを出すペクチンは、量を足すこともできるので使っているジャムは多い。私は、フルーツが本来持っているペクチンだけで作ってます。
―― どんな違いが?
煮詰めると分量が7割ぐらいになるけど、ぎゅっと味が凝縮されます。自然の力でできているものを、瓶の中にギュッと閉じ込める感じかな。
――旬のもののおいしさを伝えるためのこだわりですね。
ジャムを作ってる時間は、私も楽しい。煮詰めてから冷ましていくときには、だんだんジャムの様子が変わっていくんです。
「わぁ、そんなにシャバシャバになるんか~」とか「お?こんなに出たのか。もうイケる?」って、いつのまにかジャムに語りかけてたり(笑)。
瓶詰めして最後に脱気するんですけど、その瞬間にプシュって音がする。聞き逃さないように、静かに集中(笑)。音が聞こえると気持ちイイんです。楽しいですよ。
ボノカフェは、農家さんとお客さんのあいだに
―― 季節の果物を使ったスイーツメニューを作るということで、先日のテレビではいちご農家さんを訪ねているシーンもありました。
茨木も…、きっと高槻や他の地域もそうかもしれないけど、実は身近なところにいろんな食材があるんじゃないかなぁ。訪ねたいちご農家さんも、前から知ってた道のすぐそばでした。
(写真は2017年)
―― 今回、農家さんを訪ねたのは?
初めて。テレビの取材時期に露地栽培のいちごが間に合わないことから、茨木市内でハウス栽培のいちご農家さんを紹介してもらって訪ねました。
―― 樋口さんは「季節のもの、旬のもの」を大切に考えていらっしゃいますよね。
これは、私の感じ方なのかもしれないけど、露地栽培のフルーツや野菜は、雨風を受ける厳しい中を耐えてきた、強さを持ってるような気がするんです。食べたときに感じるものがあるんですよね。
―― 茨木で店をしているから、地元の季節のものを使いたいんですよね。
茨木の季節を伝えることには、こだわりたい。訪ねたいちご農家さんでは、二種類のいちごを紹介してもらって、どちらも本当においしかったんです。最終的には昔の懐かしさを感じられるほう、露地栽培のいちごの味に似てる「紅ほっぺ」を選びました。
――今回、農家さんを訪ねてみてどうでした?
行ってよかった!農家さんを訪ねることで「この果物や野菜をおいしく使いたい!」「無駄にしたくない!」ってこれまで以上に思ったし、いろんな情報にも触れられた。今回紹介してもらった農家さんとも、お付き合いさせてもらいたいし、これからもっと外へ出ていきたいですね。
―― 行ってみてわかることもありますね。
こういうところで作られてるんだなぁと感じたことや風景が、レシピのヒントになることもあると思うんです。
(三島独活-うど-)
―― 改めて芽生えた気持ちもあります?
自分が使う野菜や果物が作られる場所を見たり、その場で食べてみるおいしさは格別。農家さんが大変な思いをして作っていることが伝わるように調理したいって気持ちになりました。
旬のものを変身させる苦労をしたい
―― 「素材を生かす」ってことばがよく使われますけど。
それ以上の気持ちを伝えたいですね。見た目のいいとか悪いに関係なく、同じ苦労で作られてるし味も変わらない。だから大切に調理したいし、大切に食べてもらいたい。
―― さっき、スイーツのメニュー作りで「仕上げは見た目までこだわるから仕込みが大変」という話がありました。見た目の良さも悪さも同じと考える樋口さんが、見た目にこだわるのは、なぜ?
私は、あいだにいるんだと思うんです。
お客さんと農家さんのあいだ。見る楽しさをお客さんが求めるなら、おいしいものを作る農家さんとのあいだで、私が変身させる必要があるんじゃないかな。
―― なるほど。
変身させることが大変でも、おいしさが伝わるのなら、私はそれを頑張りたい。お客さんへ伝えるための苦労をしたいと思ってます。
―― これからもいっそうランチやスイーツを食べるのが楽しみです。今回も楽しいお話をありがとうございました。
■2017年2月【茨木の山の恵みを街へ伝えるボノカフェ・樋口智香さんの話】の記事でも樋口さんの思いを紹介しています。
■2017年11月【座談会「私がBONOcafeを好きな理由」-茨木野菜のランチとスイーツ】の座談会記事もどうぞ。
【BONOcafe(ボノカフェ)】
所在地: 茨木市水尾2丁目14−35
電話: 072-632-5124
営業時間 11:00~17:00(LO 16:00)
休み: 日・月・祝日
☆2022年1月から月曜も休みになっています。
駐車場 あります。
【BONOcafe公式サイト】
〒567-0891 大阪府茨木市水尾2丁目14−35