立命館OIC「ラーメン」×「心理学」×「食」魅惑シンポジウムを体験した!
はい、茨木ジャーナルです。
9月11~13日、立命館大学大阪いばらきキャンパス(OIC)で、第83回日本心理学会が開催されていました。
■【「立命館で心理学」と「とりとっとー移転open」と「茨高生クイズに挑戦」のこと】(2019年9月11日)記事参照。
立命館大学の職員の方によると、どのプログラムも大盛況で幅広い層の方が興味を持って参加していたとのこと。
私も「食心理学の冒険 知覚システムから文化差まで」というシンポジウムへ行ってみました。
そうだったのかと思うことが多くて楽しい内容でしたし、日常の生活や仕事でも使えそうなヒントもあり、行ってヨカッタですよ!
講師は、OICラーメン部アカデミック担当の和田有史さん(食マネジメント学部教授)。
ゲストに、フードコラムニスト・門上武司さん(あまから手帖編集顧問)と、塩ラーメン専門「龍旗信」代表・松原龍司さんを迎えた「食」「ラーメン」「心理学」の専門家によるプログラムです。
「食心理学の冒険 知覚システムから文化差まで」シンポジウム
【OICラーメン部で「茨木きんせい」へGo!ズズッとすすれ、大人たちよ!】(2018年9月24日)記事でちらっと紹介したOICラーメン部から「ラーメンと心理学の話らしい」と教えていただき行ってみたのが、このシンポジウムです。
「日本心理学会」というだけあって、講座は「ついていけるかしら」という話からスタート。
「甘味・苦味・酸味・塩味・うま味の5つの基本味は、舌にある味蕾(みらい)が受け取って、味神経を介して脳へ届きます」と和田さん。
舌に味を感じる部分があるもんだと思っていたので、さっそく「ほぉ、そうなのか」と賢くなった気分に。
「味の一つ一つが学術的な研究分野。いろんな研究分野を心で繋ぐ、実験で繋ぐのが心理学です。今日は心理学現象を体験してもらいます」
参加者みんなが実験し「ほぉ…!」とおもしろい現象を体験しました。
ほぉ!その1:「ライム」+「シナモン」はなんの香り?
「においについて考えてみましょう」と参加者に回ってきたのが、これ。
ライムの香りを染み込ませたもの(左)とシナモン(右)がそれぞれ入った瓶です。それぞれ、ちゃんとそのにおいがします。
ところが、これを一緒に嗅いでみると、あらまあフシギ!
コーラの香りがするんです!!
私たちは、コーラのにおいもライムやシナモンの香りも知っている。
においの組み合わせでコーラのにおいも知っている。
けれど、組み合わせてで覚えているものは、うまく分解しにくいんですって。
料理の世界でも、組み合わせによって別のものを作ることはあると、門上さんと松原さん。
コストパフォーマンスから生み出されることもあれば、フレッシュな食感とその真逆にある味を表現するために組み合わせることがあるそう。そんな工夫があるとは…と驚きました。
「料理人は科学者なんだなぁと感じますね」という和田さんの言葉も印象に残りました。
ほぉ!その2:においは味を支配する!
続いて、参加者の席に置いてあるチョコを使った実験をします。
包みを開けたチョコレートは、いつものあの甘いいい香り。食べられる準備ができたら、鼻をしっかりつまんでチョコを口に入れてみます。
想像通り…、いやいやそれ以上にねっちょりした感じ。つまんでいた手を離した瞬間、チョコの甘さが鼻のほうへ広がり、ホッとしました。
「チョコの味は、におい。味はかなり香りに依存してるんです」と和田さん。
「味が香りに依存している」という例で、龍旗信の松原さんは「うちの塩ラーメンには、レモンを使っている」と話します。
レモンの爽快感を鼻に通すことでスープを飲みやすくするのだとか。せっかくの料理を完食してもらうための工夫は、香りにあるんですね。
門上さんはフランス料理の「オマールエビのバニラソース」を例に「バニラソースの『甘い』感じを人間の脳が想起することで、オマールエビの甘味が引き上げられる効果がある」と紹介。
「香り」の経験を重ねることで、私たちは味を感じるように学習しているんですって。
日本人は小豆の甘さを知っているけれど、それを知らないドイツ人の場合は、鼻をつまんで羊羹を食べても普通に食べても「甘い」とは感じないのだそう。
味は、その国の食文化も関係するとわかるお話でした。
ほぉ!その3:旨味の相乗効果を体験
次の実験は「旨味」について。ふだん「旨味を感じるよね~」なんて言ってるアレです。
配られた二つの液体は、左側が昆布や野菜の旨味「グルタミン酸」。
赤い印が付いているほうは鰹節などの動物系の旨味「イノシン酸」。
どちらも透明で、舐めると似たような「旨味」を感じます。片方ずつでもオイシイのですが、実験では「グルタミン酸」の中に、赤い印の「イノシン酸」を少し入れて混ぜてみました。
すると、「あ!」とわかるほど味が強くなって、ちょっとビックリ。
これが旨味の相乗効果。
食品の味やクオリティをあげてくれる旨味は、掛け合わせることでさらにおいしくなる(旨味が増す)ことを体感しました。
「動物系と野菜系の旨味の掛け合わせは、イタリアやフランス料理でももちろん使われています」と門上さん。
あ、そうだ!出汁だけでなくスープでも「旨味の相乗効果」がありますよね。
松原さんは、龍旗信のスープ作りについて、惜しみなくその工程まで披露してくださいました。
使う材料やそのタイミング、温度の管理など、手間と経験によって一杯のラーメンが作られていることが改めてわかり、スープもズズッと飲みたいですね。
ほぉ!その4:料理人による「味の演出」
松原さんと門上さんによる、「おいしく食べてもらうために料理人がしていること」の話は、一般人の私が聞いていてもおもしろいことばかり。
苦いギムネマ茶を口の中に含んでから飲み、そのあとに甘いグミを食べる実験も行いました。
ギムネマ茶が口の中で甘味受容体にフタをするので、当然ながらグミの味もまったく感じません。
「料理人は、味や香りをどう感じさせるか、前の料理と次の料理の間にどんな飲み物を挟んだらいいかまで考えています。口の中の温度によっても味の感じ方や香りのたち方が変わります」と門上さん。
食べ物の温度や提供の順番や食べ物とお酒の相性まで考えられているのは、パーフェクトな自分の世界を感じてもらうためのこと。
同じお酒でも温度を変えることで、同じ料理の味が変わる…なんて話もオモシロかったなぁ。
ほぉ!その5:見た目は大事!!
わかったように思っていた味や香りや料理のことが、ちょっとした実験や専門家の解説によって、どんどんリアリティをもって「なるほどね~」と入ってきた、楽しいシンポジウム。
さらに興味深かったのが「見た目って重要ですよ」という話。
テレビでお肉をジュッと焼くシーンを見ることがありますが、やはり「シズル感」があると視聴率もあがるのだとか。人間の欲望に訴えることは重要だ、と門上さん。
おいしそうな料理の写真を見せながら「北新地の料理屋のランチの写真なんですけど、これいくらと思いますか?」と参加者に質問する場面も。
2,000~3,000円という答えが多かったのですが、なんと正解は750円!
百貨店で買ったお弁当をお皿に盛りつけた写真なんだそう。
『北新地』とか『料理屋』という言葉で、高いと思い込んでしまうんですね。私たちが、どれだけ目や耳から入る情報によって惑わされているのかを感じました。
お料理は、味はもちろん食感や目や耳から感じるものも楽しみです。
「皿の上のものを変えるというだけでなく、季節やシーンによってお皿ごと変えるなんて、フランスにもない」と門上さん。
「ちょっとの工夫で気持ちが変わるのだから、うまく活用するといい」というのは、普段の生活や仕事でもヒントになる話でした。
また、松原さんのラーメンへのこだわりは「こんなに手間をかけてるんだ…!」という驚きの連続。
料理をする方々の手間や工夫、器や盛り付け、季節やネーミングなどさまざまな事柄が、価値を高めていっているんだなぁと感動したシンポジウムでした。
立命館大学OICは、岩倉公園やフューチャープラザもあり、茨木市民が立ち寄りやすいスポット。専門家のホンモノの知識に触れられる機会もあるので、チャンスがあれば気軽に足を運んでみると良さそうですよ!
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